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「恩人にお礼どころか酷い仕打ち!
人間にまでなって会いに行ったのに、好きになってもらえず、別の人と結婚。
揚げ句の果てには、目の前で、自分の好きな人の結婚の祝いの踊りをさせられ…。
ふられて悲しんでいるあの子に対して、どうせヘラヘラ笑って、イチャイチャ見せ付けてたんでしょ?」
「知らなかったんだ!!
知っていたら、そんな事は…!」
必死に王子が訴えるも、セイレーンや人魚達には思いが届かなかった。
「それはどうだか?
人間は所詮、都合が悪くなると言い訳をするのよね。
私達にしてみたら、人間達の方が醜い怪物に見えるわ。
…もういいわ。
私達、大切なあの子がいなくなった今では、あなたが死んでも構わないの。」
どんどん爪が食い込み、みるみるうちに王子は血の気がひいていった。
「き…聞かせて…くれ………。
な…ぜ……彼女……いなく…なっ……」
力尽きかけた王子は、最後に…と質問した。
「恋にやぶれたあの子は、選択肢が二つあったの。
一つは朝日が昇る前に、恋した人間…あなたの心臓をえぐり出し、食べる事で、再び人魚に戻る。
もう一つはそれをせず、朝日が昇ると同時に泡になって消えてしまう。
あの子は泡になってしまったのよ!」
人魚達はまたも大粒の涙を流した。
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