いきさつ

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深刻な様子で茉莉から電話がかかってきたのは先月のことだった。 晴哉のカウンセリングで浮気を知った賢司は、探偵を雇い茉莉の素行調査をしたのだそうだ。 すべてを知ってしまった賢司は、もう茉莉を愛せる自信がないと、慰謝料を請求したりはしないから、別れてくれと言ったのだという。 親権の話になった時には、賢司は親権を放棄すると言った。 「晴哉も未紅も愛しては居るが、自分と血が繋がっていないかもしれないと思いながら暮らすのは耐えられない。君の子なのは間違いないが僕の子かどうかはわからないんだろう?」 落ち着いた様子で、だからこそ有無を言わさない迫力を持って別れを切り出したという。 更に、 「二人の子は血のつながりはどうあれ愛しているから養育費は払うし時々会わせて欲しいけれど…。」 と続けたそうだ。 茉莉だけ出ていくのであれば、むしろ楽だったであろう。転がり込む男の家ならあるのだから。しかし茉莉はその時無職で、しかも11歳と8歳の子ども達ごと、どこかに移り住まねばならなかった。 それで茉莉はとんでもないことを言い出したのだ。 「なつきのところに一緒に住ませて貰えないかな?」
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