第一章

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僕は今何処にいるのだろうか。 高熱にうなされているときみたいに頭がぼーっとする。頭にもやがかかったような感覚で何も考えがまとまらない。 規則的に揺られるうちに、自分が電車に乗っていることを思い出した。 「(そうか、帰ってきたんだ…)」 一際大きく揺れると電車が止まった。どうやら降りる駅に着いたようだ。 改札をくぐり地下から地上に出ると曇天の空が僕を迎えた。 見上げると立ち並んだ高層ビルが見える。 「一雨来そうだな」 視線を下にずらせば、スーツ姿の人々が忙しなく行き交っている。 その一人と肩がぶつかった。 後ろの方から舌打ちが聞こえたが、あいにく僕はそれの相手をする気にはなれなかった。
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