プロローグ

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彼女、ミクリアは僕の妻である。 背は僕と同じほどで、緑色の髪は腰まで届いていている。 普段はその長い髪を分けてツインテールのように括っているのだが 今日は下ろしたままなので、淡い色のワンピースと一緒に風の中を泳いでいた。 彼女は元々僕と同じ研究者であった。 同じように大学で大脳について研究し、就職、入籍を経た後も お互い二人三脚で生きてきた。 ただ僕らは研究自体は好きであったが、それを取り巻く環境は好きにはなれなかった。 研究を続けるためには金が必要で、その金を得るためには名誉や実績が必要。 その実績を得るためには研究の成功がいるわけで、結局何をするにしても金が必要になるのだ。 その金が誰にも迷惑をかけずに集まるのなら問題はないが、 僕らが生きて暮らしていく以上の「余剰」な金は実際には経済という流れを通じて 最終的には貧しい人からの搾取以外に他ならない。 たとえその成果が後に多くの人を救う事になりえたとしても、 今失った犠牲の償いにはならないだろう。
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