プロローグ

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そんなように考えはじめると次第に手が進まなくなっていった。 僕には彼女がいればそれで十分だったのかもしれない。 だから、研究の成果として人工知能の基礎理論が完成したときもあまり感動しなかったのを 覚えている。周りはたいそう喜んでいたけどね。 それよりも機を同じくして彼女が病に倒れたことのほうが、僕には重要だった。 だがこれはチャンスでもあった。 これは僕らがこのくだらないサイクルから抜け出す都合の良い理由になったからだ。 それからしばらくしてから僕らはこの場所にやってきた。 ただ唯一の誤算は、彼女の病は重く進行が早いということであった。 しかしそんなことが些細に思えるほど、彼女は変わった。       彼女は大人しくておしとやかな感じだったので、 そんな彼女がこうやって踊っているなんて光景は以前の僕からは考えられなかった。
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