衝撃

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「しっかし‥、こんな道‥‥うっ、知らなかった。ってか道って言えるのか!?」 海渡の決意から数分後、上着を羽織り、必要最低限な荷物をととのえた二人は通気孔を通っていた。 荷物は災害時や万が一の時のためにすぐに持っていけるようにコンパクトにしてあるが、今移動している道(?)の幅はたかが40cm前後。前に進むのは苦労する。 「偶然古い地図を見付けてなっ。知らない施設とか‥‥、書いてあってもしかしたら、これ(通気孔)使ったら移動出来るんじゃないかと思ってな。‥‥うぉぇ、蜘蛛の巣!」 所々突っ掛かりながら話している勇吉を前に見据えながら海渡は外の様子を想像していた。 (どんな感じなのかな?海って本当に一面中水なのかな?空って本当に果てしないのかな?) 期待に胸を膨らませただただ後を追って進んでいたら、急に勇吉が止まり、海渡はぶつかりそうになった。 「着いたぞ。」 そういいながら勇吉は通気孔の入口を塞ぐ鉄柵を殴っている。過去はしっかりとしていただろうが、この場所が使われなくなって相当時間が経つ。鉄柵は風化していて、勇吉が2、3発殴ったらすぐにはずれてしまった。 二人は狭い通気孔から飛び出し、身体を伸ばした。二人が出た空間は畳六じょうぐらいのスペースがあり、四方全てが壁に囲まれていてその壁の一つに上へと続くはしごがあった。 「ここは‥‥」 「シェルターか何かかな?壁も厚いし、はしごも随分上まで続いてる。」 壁をコンコンと小突き、上を見ながらながら海渡が答える。 「へぇ~、お前観察力あるねぇ。すげぇっす。」 勇吉が感心の念を海渡に向ける。しかし、海渡は上を見上げながら勇吉の褒め言葉に反応するそぶりも見せない。 (この上に俺がずっと見たかった世界が広がっている。)
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