第一章

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1 式は長く続いていた。 立ち続けることは我慢できたが、同じ姿勢のまま動けないのがひどく苦痛だ。 唯一の救いは、ここが建物の中ではなく、美しい景色に囲まれた城内の広場だということだった。足元には真新しいタイルが敷き詰められ、頭上には遮るもののない青空が広がっている。 その式典は入隊式と呼ばれていた。 ローティオ山脈の北西に位置するディシディア王国。 俺は以前、ここになにかの理由があって来たことがあった。だがそれは曖昧な記憶の片隅に残っているだけのもので、自分が今この場所に居る意味にはなんの関係もないものである。 式自体は退屈だが、今日から夢にまで見た国を守る兵士になれることができるのは、素直に嬉しかった。
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