0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ティティア……もうこんなことはしないでくれよな」
君の頬を撫でたあと、冷たくなった手を握る。乾き始めた血の感触や匂いは、君が生きていることの喜びを感じる以前に、不快なものででしかなかった。
「わかった、もうしない……でも、セイトも勝手にいなくなったりしないでね?」
君は少しだけ涙を浮かべながら答えた。
「あぁ、もう勝手いなくなったりしないから」
「約束だよ?」
「あぁ、約束する」
「ありがとう」
一瞬、君の目から涙がこぼれ落ちたのを俺は見逃さなかった。
そのことをあえて見なかったことにし、俺は目を上げ今いる場所を確認した。
灯りのない夜の砂浜。白く輝きを放つ砂と月の灯りを反射させる広く暗い海のちょうど真ん中にある君の血にまみれた身体。それを照らす夜月の光源が、君の無惨な姿をより際立たせていた。
最初のコメントを投稿しよう!