君と俺の善悪

2/15
前へ
/65ページ
次へ
-奏side- 溶けてしまいそう。 ‥それが俺が彼をここで見た最初の感想だった 白い部屋、白いベッド、 白い布団に白い枕 ‥‥それらよりも白く儚い、彼の顔 このまま雪の様に溶けて消えるんじゃないかって、半ば本気で思った ゆっくりと彼に、いや、 彼が寝ているベッドに近づく あえてゆっくりなんじゃない。 ‥脚が、身体が思う様に動かないんだ 「‥‥‥こ、さ‥」 ‥掠れた、情けない声しか出ないんだ。 名前を呼びたい、 抱きしめたいのに、 ‥そんなことすらもう赦されない。 嗚呼、 今日も彼はこのどこまでも白い部屋で 今にも消えそうに生きているのだろうか ‥誰のせいか、なんて痛いほどわかってる ‥代われるもんならあんたの代わりに俺が溶けんのに それが出来ない自分が酷く無力で、惨めに思えた。 ----past-- あの日、相澤さんからの電話を受けて、すぐに病院に行った。 いや、行かされたの方が正しいかも知れない。 相澤さんがすぐに車で迎えにきて、そのまま一緒に連れてってくれたらしい。 ‥俺はただ、みっともなくがたがた震えていて、よく覚えていないのだが。 ‥彼がいる手術室の前で 険しい顔をしたリーダーと、泣きそうな顔をした慧くんが現状を詳しく話してくれた。 だが俺に理解できたのは [紅さんが事故にあった] ことと [今、手術してる] こと [助からないかもしれない] ことの3つぐらいだ。 ‥つまりなんにもわかっちゃいなかった。 ただ、リーダーが異常にしっかりしていて あぁ、やっぱりこの人は凄いんだな なんてぼんやり思った記憶がある。 -
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

227人が本棚に入れています
本棚に追加