君と俺の善悪

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3時間か、もっと長いか ‥俺には永遠の様に感じたぐらい長い時間の手術が終わり、 担当医らしき男がドラマでよく見る緑っぽい手術服を着て出て来た。 その男は疲れた顔で 手術が成功したこと、 検査しないとわからないが、後遺症もないだろうと言うこと、 この手術が奇跡的な成功だと言うこと をつらつら話した。 (最後のなんか、どーだっていーのに、1番誇らしげに語っていた) みんな泣きながら喜び、口々に先生にお礼を言っていて、 俺はというと、何も喋れず、ただしゃがみ込んでひたすら泣きじゃくっていた。 ‥良かった。これで伝えられる。 拒絶されるかも知れない それでも、 自分を押し殺して生活させてしまった彼にせめて謝罪ができる。 俺の頭はやっぱり自分中心にできてるみたいで、 彼が生きてる喜びよりも、自分が謝罪できる喜びの方が強かった ‥謝罪っていうのは、赦しを請うことなのに。 どこまでも脆弱で浅ましい俺の心に呆れを通り越して笑えてくる ‥数日後 彼が目覚めたと言う連絡を受けた時、俺は直ぐさま病院へ向かった。 心の中は決して穏やかではなく、 彼に拒絶されたらどうしよう ちゃんと全てを伝えられるだろうか など、ぐるぐると余計な事を考えていた。 しかし 「佐藤さんは、目、耳に障害が残りました。」 ‥病院で聞いたのは、 彼の拒絶の言葉ではなく、医者からの聞きたくもない事実だった 「‥え?」 メンバーと彼の家族や、マネージャー、社長の秘書なんかが一つの部屋に集められて、心の隅で嫌な予感はあったが こんなに酷いなんて誰も思わなかった 「‥ど‥してですか‥っ この前の検査では何もなかったって‥!」 泣きながら問う彼の母親 「身体的には何の問題もありません。 しかし ‥佐藤さん本人が見ようとしない、聞こうとしないのです。」 事務的な口調で自分達に過失はない事を強調したがる医師 唇を噛み締め、悔しさに堪えるメンバー そして、 現実を受け止めきれずにただただ、呆けている俺 ‥嗚呼、やっぱり貴方は赦してはくれないんだね ぼんやりとした頭の中で彼に問い掛けた -
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