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その後、皆で病室に行き変わってしまった彼の姿を見たが
俺は、その日見た彼を決して忘れないだろう
‥何も映さない瞳で宙を見つめ、
白い、白い部屋の中で
黒い孤独の世界にいた彼を。
‥彼がそこまでして、拒絶した風景、音は一体なんなんなのか。
‥そんなの、俺しかないじゃないか。
俺が壊してしまった。彼の全てを。
目も耳も人生も心も。
‥‥全部俺のせいなんだ。
----now--
彼の病室にくるのは、実はまだこれが2回目だ。
‥初めて彼をここで見た時以来、病室の外までしか行かなかった。
いや、行けなかったんだ。
俺はあの白く、孤独な彼に畏怖を抱いていたから
名前を呼んだきり動けない自分が情けなく、笑えてくる
聞こえていないのだから、反応もあるはずないのに
無反応にぎゅっと胸が締め付けられる。
‥彼は寝ているのだろうか?
目を閉じて穏やかに呼吸している。
‥寝ているのなら‥
身体が動き、震える指先で彼の手に触れようとした。
ゆっくり、ゆっくり
一瞬だけ
貴方を
温度として感じたい
みっともなく震える俺の右手が、彼の左手をそっと包み込んだ
その瞬間、
彼の右目から零れた一筋の涙と
俺の左頬に感じた熱い滴に
まだ俺らは繋がっている
なんて思った俺はやっぱり自惚れているのだろうか
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