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彼に触れた瞬間、溢れ出したのは謝罪でも罪悪感でもなく、
狂おしいまでの愛しさとしょっぱい泪だった
そして、まるでリンクしたかの様に彼からも流れる一筋の泪。
何故?
何故泣くの?
本当は起きてたの?
それとも触れたのが俺だから?
でも手だけで(それも一瞬で)俺だなんてわかる訳‥
「‥‥‥‥‥‥な‥‥」
ぐるぐるとパンクしそうな頭で必死に泪を止める術を思索していたら
聞こえた微かな声
掠れて、小さい声だが俺には届いた
‥‥‥届いてしまった
「‥‥‥か‥‥‥な‥」
頬に泪の筋を付けた彼が小さな小さな声で俺の名を呼んだ瞬間、
身体中を歓喜と戸惑いと罪悪感とが一気に閃光の様にはしって
怖くなった
白い彼を畏れていた癖に、白い彼が俺が触れた所から汚れていく様な気がして
何も考えずにぱっと手を離し、後ずさってしまった。
‥大丈夫。まだ気付いてない。
きっと気のせいだったと諦める
彼に触れた手を握りしめながら必死で自分を守っていた
‥それなのに
「‥ぅ‥あ‥か、な‥?‥‥か‥な‥‥かなぁ‥」
譫言の様に俺の名を呼びながら手を伸ばし、
必死に俺の体温を捜す彼は
容赦なく俺の心をえぐった
ベッドの縁から身体を乗り出して宙をまさぐる彼に慌てて更に後ずさる俺。
ぐらり
どんどん身を乗り出す彼
がバランスを崩して落ちそうになった時、
俺は何も考えずに
彼を受け止めようと勝手に身体が動いてしまった
「紅さんっ!!」
ふわり
抱き留めた彼の温かさと
有り得ないほどの線の細さに
もう一度、見えない涙を流した
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