東京編

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「叶不名誉事件」  相沢の眉間に寄ったシワがゆっくりと解け、その表情はみるみる悲しそうに歪んでいく。  それと同時に力の抜けた手から、叶のTシャツがほどけるように離れた。  相沢の後ろに座る二人の男達がゴクリと唾を飲み込む。  伏せた顔を上げ、互いに頷き合うと椅子の下へ降りて正座をした。 「あのっ……リーダー、相沢さんは悪くないんっス!」 「気づいた俺らが言うべ……」  言葉の途中で、相沢がスッと右手を横に広げた。 「俺が言う……」  小さく、けれど低く響く声で振り向かずに男達を制すると、相沢は叶を見つめる。  その目は先ほどとは違い、動揺の無い真っ直ぐな視線。  叶は大きく息を吸い込み、その視線に応えるように相沢を見つめた。 「兄貴……」  張り詰めた空気は流れている曲さえ掻き消すようで、みな一様に息を飲む。 「Tシャツが……前後どころか裏表も逆です!」  その声はあまりにも雄々しく、後に裏では“叶不名誉事件”としてひそやかに語り継がれた。
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