一章

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「そんなに嬉しそうな声あげちゃって~。なになに? 私に会えなくて寂しかった?」 「どこをどういう風に聞いたら嬉しそうな声になんだよ!? 会えなくてって……てめえは毎日のように来てんじゃねえか!!」 「そう? 寂しかったんだ。錦って可愛いね!!」 「寂しいって肯定してねえし!! それに呼び捨てにするな!!」 小柄な影が現れるなり始まったのは、新見と小柄な影のーー女の噛み合っていない会話だった。 青の着物を着た女は凄む新見に怖じ気づくことはなく、逆にそれを楽しんでいるかのようにからから笑いながら新見に絡む。 一方の新見は額に青筋をひとつ浮かべるが……それがまた女が楽しむ要素だというのを新見は気づいていなかった。 「門番にこいつを入れるなって言ったのに……。なんで連れて来るんですか!?」 新見の矛先は扇をはたはたと揺らす芹沢に向いた。 「理由が欲しいか? それは決まっているだろう。 新見をからかう為だ」 「…………」 新見をからかうのに楽しみを見いだしている芹沢。 そんな芹沢の新見からかい方法は、この女を使うのに決まったようだ。 それを悟った新見は肩を落とし頭を垂れ、それはそれは深い溜め息を吐いた。
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