十三章

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料亭“山緒”に着けば、二階の部屋にと通された。 部屋にと入るなり料理と酒が運ばれ、舞妓も来たが、新見はそれら全てを断り追い出した。 「あいつら……慰みのつもりか? いらねえっての」 苦笑を浮かべながら窓際に頬杖をつき、通りで見た穏やかな空を見た。 そして空いた手をかざして見るのは、眩いばかりの光を放つお天道様。 「眩しいな……。はは。あいつとはちげえや」 同じお天道様でも、光の強さはまるで違う。 今空に浮かぶのは地上のものを全て照らす強く眩しい光だが。 新見の愛したお天道様は……明るいくせに月のような柔らかな光を向ける、優しいもの。 そんなことをぼんやりと思っていれば、襖の向こうから女中が声を掛けてきた。 「お連れ様がお見えになりました」 その声に短く、通せ、と答えれば、襖は静かな開き二人の人物が部屋の中にと入ってくる。 その人物とは 「やっと来たか。呼びつけておいておせえんだよ」 土方と沖田。 浮かべる表情は無理に引き締め重いもの。 新見はそんな二人を見て不敵に笑った。
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