十三章

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呼び出された理由は知っているだろうに。 今から何が起こるか分かっているだろうに。 だというのにいつもの不敵な笑みを浮かべる新見を見て、土方は眉間の皺を深くし、沖田は目を逸らした。 新見の全てを理解し受け入れようとしている姿が、理由を知っている二人には痛みとなって心に走る。 だが、情に流されるなと土方は内心己を叱咤し、新見に向かい合わせで座る形でどかりと胡座をかく。 自分とは違い非情になりきろうとしている土方の後ろに控えるようにして、沖田も腰を下ろした。 そんな沖田に新見は体を後ろに傾けさせながら半眼になる。 「おい沖田。いつもの人を小馬鹿にする威勢はどこにいったんだよ? てめえは紺と一緒で馬鹿騒ぎをすんのが好きだったろ? だったらそんな陰気な面すんじゃねえよ」 口端を上げながら挑むように、おちょくるように言えば、沖田は俯かせていた顔を弾かれたように上げた。 紺。 新見が口にした名前が棘となって突き刺さってくるが、新見は自分の沈んだ顔を望んではいない。 むしろいつもの沖田を、紺と一緒になって新見に悪戯をしていた自分を望んでいて。 沖田は楽に息を吐きながら、沈んでいた表情に小さな明るさを取り戻す。 それを確認した新見は一層口角を上げると、険しいままの土方に目をやった。 「で? 呼び出した理由を一応聞いておこうか?」
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