十三章

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「局中法度。この前出したこいつを知ってんだろ? あんたは二つも破っちまった」 土方の言う局中法度とは、五項目から作られた鬼の掟。 それは新撰組という組織を強固なものにする為に作ったものだが、項目一つでも背けば厳しい制裁が待ち受けているというものだった。 「勝手に金策致すことを許さず。私闘を許さず。新見さんよォ、あんたはこれに背いただろう?」 厳しさと冷たさが増す漆黒の双眸。 その奥にあるのは揺れる弱い部分だが、土方は心を徹し非情になる。 何故新見錦という男が局中法度を破ったのかは理由は知っている。 佐伯という、理由の一つにも直面した。 理由の根元にある、彼女の存在も知っていたし……部下である沖田は彼女によく懐いていた。 そんな彼女が新見にとって何なのかは知っているが、だが、だからといって法度を破った者に情けをかけ、見逃すわけにはいかない。 一人を見逃してしまえば法度は甘く見られ、新撰組は強固な組織にはならず。 それに……新見の制裁は、一枚岩になる為のきっかけなのだ。 「条文を破った者には切腹申し上げる」 前に新見に言われたではないか。 『迷うんじゃねえよ土方』 『非情になれ!! 鬼になれ!!』 と。
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