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奉公先である主人に使いを頼まれ、使いの先が近所だから大丈夫だ、とそう高を括って付き人を付けなかった自分の責だ。 今の京は物騒だと口酸っぱく言われ続け分かっていた筈なのに、自分に限ってその物騒は降りかからないだろうと、簡単に考えていた。 その結果がーー 使い先から戻る時に酒の臭いを漂わせる集団の一人に肩をぶつけてしまい、顔立ちに着ている物から女だと直ぐに察せられてしまい、欲のはけ口にするが為に追われている。 必死に、逃げた。 整えた髪が乱れようと、足から血が滲もうと、上洛して日が経ったのにも関わらず京の地理全てを理解してなくとも。 無惨な扱い無惨な死から逃れるべく、ただ必死に。 明かりのない細い道を右に左に、逃げのびることだけを考えてがむしゃらに。 「へへ。鬼が迫ってきたよぅ」 「最初は俺だ。俺が一番だからな」 「一斉にかかるのもそそられるがなぁ」 距離を徐々に詰めてきた男達は、ゲラゲラと笑いながら品のない、女にとっては嫌でしかない会話をしている。 誰か誰かいないか、そう願いながら目を凝らし走るが、運が悪いのか、入った道が悪いのか、人の姿などなかった。 息は荒く苦しく、体力の底も見えてきた。 逃げなければいけないのに、足はいうことを利かなくなってくる。 足はもつれ、呼吸は乱れ、嫌な汗が髪を肌に張り付かせ。 けれども女は懸命に逃げる。 そして一筋の、一筋の光を見つけ出した。
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