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アイもエフへと目を向けた。
「どの辺がいいんです。過去盛大に裏切った女なんでしょう。女、あいつだけだったから良く見えるんじゃないですか」
「ああ、そうかもな」
呟くようにジェイが答える。
「けど……」
「けど?」
「明るいヤツだったんだ、もとは。今はツンツンしてるけど」
言いながらジェイは投げ出していた膝を立てた。
「……いいヤツなんだよ、あいつは」
「そうですか」
ルーイが頼っている相手であり、実質ナンバー2であるジェイに、アイはいつしか敬語を使うようになっていた。アイ自身、ジェイを尊敬しているため自然とそうなったが、今の状態はもどかしい。
エフごときにジェイを翻弄されたくなかった。
「エフ、ボスが好きなんじゃないですよ」
「え?」
純粋に驚いた顔で見上げられた。その表情が、
ジェイはエフがルーイに気持ちを寄せていると思っていることを確信させた。
「ボスには口止めされてたんですが。あんたがエフにそこまで本気なら隠しちゃおけない」
ジェイの顔が不安そうに歪む。ジェイのきれいな顔は時々アイの加虐心をうずかせる。
「ボスは、城に監禁されてた時エフを慰み物、なぶりものにしたそうです。エフはそれが原因で、ボスが怖い」
まあ、裏切った負い目ってのもあるでしょうけど、とアイは付け加えた。
思った通りジェイの表情が凍り付く。
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