Ｊ

怒ってくるのは分かっていたので、心外そうな顔を作ってアイはジェイを見下ろした。

「で、エフでいいんですか？どこがいいんです。あいつなら言うこと聞きそうだからですか？」

青ざめたと言うより泣きそうに歪んだジェイの表情に、アイはジェイの心の奥深くにエフが入り込んでいることを悟った。

アイの足を掴んでいた手はぱたりと地面に落ちた。

「おまえ、何の用だったんだ」

「あんたが腑抜けてるから困ってんですよ。おれたちは、金髪は好きだからどうとかそういうこととは無縁です」

フォローのつもりで言った。

「エフならいつでも好きにしたらいい。エフぐらいのことでフラフラしないでください。今あんたがするべきなのはボスにかわってこの集団を仕切ることだけだと思いますよ」

そう言ってアイはその場から離れた。

距離をとってから振り向き、よびかけたが返事はなかった。茫然と、しょんぼりと座り込んでいる姿だけが見えた。

「ちっ」

仕事に連れ戻すのを失敗したこと、余計なことを言ってしまったことに、思わず舌打ちした。

悪い方へと、刺激してしまったかもしれない。