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ディはジェイの汚れた体を拭い、シャツを着せてくれた。
「7日は余裕でもつくらいせびった。足りない? もっとヤバかった?」
それを聞いて、まあいいか、とジェイはもたげた頭をことりと落とした。
ディが心配そうに背中をさする。
余韻にしびれた体は、その触感にすらびくびくと震えた。
「ジェイ?」
「……わるぃ、立てね……」
そういうとディが背中をむけてくれた。
ディの背に身を委ね、ジェイは力を抜いた。
よいしょ、とディはジェイを背負って立ち上がった。
「さ、帰ろ!あ、なんかね、ルーイのヤツがめちゃめちゃ怒ってるけど気にすんなよな」
ディが言った。
はあ、とため息がもれる。
「っと、あいつワケわかんね」
これで当分、飢えなくて済むのに。
ルーイも文句はないはずだ。
はっと目が覚めた。
(………ゆめ……)
もうずっと昔のことのように思える。
時間にしたら、一年かそこら前に過ぎない。
記憶が、鮮明で生々しい。
目尻からこめかみへと流れる感触で、涙が溢れたことに気付いた。
どんなに過酷で過激なことをされても、最後に目を開けた時にいたディはもういない。これから先何度目を覚ましても、ディの顔がのぞくことはない。
「……ジェイ、大丈夫?」
その声に、完全に現実に引き戻される。
エフが、心配そうに覗き込んでいた。ジェイは起き上がる気にもなれず、ただもう一度目を閉じた。
傷を負い、脱力しきった体に力は入らない。
「ジェイ?」
返事をしないでいたので、エフがますます心配そうに眉を寄せる。
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