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「……エフ」
手を伸ばすと、エフはその手を取って助け起こしてくれた。ジェイはそのままエフの胸へすがった。
「だ、大丈夫……?」
「ゆめ……みた」
エフはそっと頭を撫で、ジェイの言葉を聞いてくれた。
溢れた涙は、柔らかで温かなエフの胸に吸い込まれてゆく。
「………そっか」
エフはそれ以上言わず、黙ってジェイに胸をかしていた。もうずいぶん泣いたのに、まだ涙は流れる。
エフの胸で泣き、震えた。もう何度、そうしてくれたか分からない。
エフがいなかったら、エフがそうしてくれなかったら、多分狂っていたとジェイは思う。
「……水、飲む?」
嗚咽に震えるジェイの背を撫でてエフが聞く。涙が収まったのを見計らってエフは水を用意してくれる。
ジェイはただ、こくりとうなづいた。
今までは、ディがしてくれた。どんなに無理をして気を失っても、ディが集金も体の面倒も見てくれた。
エフがくれたカップの水を口に含むと、渇ききった喉に痛いほど染みた。ディも、いつも水を汲んでおいてくれた。口内と喉へ水を流し込むと生き返るような気がしたものだ。
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