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ディを思い出させるエフに、本音と反対の言葉が口をつく。
「ルーイんとこ、行けば? ルーイの手当の方がしたいだろ」
エフは困ったように眉を落とす。
視線を游がせるその様に、嫉妬した。ディを助けられなかったルーイを責めないように自分を監視しているだけだと思うと、胸が妬けた。
「……行けばいいのに」
エフが困惑している。
つり目がちな目が、弱気に見えた。
「……あっちはアイがいるし、人手も足りてるから…… 邪魔なら出てくよ」
もたれかかっていたジェイの頭を敷布の上へと寝かせようとするエフの手を、いやいやをして振り払う。
エフがルーイを想っていることは、良く分かっていた。
でも。
エフの背へジェイは手を回した。肉の薄いエフの背を布越しに抱きしめる。
エフのしてくれる手当が、ディを思いださせる。それだけではなく、いつも献身的に仲間に貢献しようと駆け回るところ、いつも輪の一歩外にいながら誰よりも働くところ。
誰のどんなにひどい傷でも、臆することなく真っ先に手当をするところ。
みんなが楽しそうな時は、裏切りの負い目からか、いつも輪の一歩外からそれを眺めている。
ディを失ってだいぶ取り乱していただろう自分を、そのまま受け止めてくれたエフを、自分の手の内に収めたくて仕方なくなっていた。ずっと自分のためにそばにいてほしいのだ。
「おれじゃ、だめか?」
口をついて出てしまった言葉に、もう引けないと思いエフの服を握りしめてしまう。
「ルーイじゃないと、だめなのか?」
エフが強ばったのが分かった。
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