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身を固くしたエフの手が、背中で止まっている。もともと、もっとあっけらかんとした明るい性格だったのに、ガオが死んでから打ち解けた態度をとることはなくなっていた。
ルーイの名前を出されたエフは明らかに動揺していた。
「な、なんで… あの人は特別じゃん」
ジェイはぐっと顔を埋め、エフを抱き締めた。
腹筋が強ばってびくりと動く。
「なんで、あたしなんか…… あんたには、いい子がいっぱいいるよ。助けてくれた連中は女町のヤツだし、だからこれから……いっぱい……」
いたわりで優しかった声が震え、不自然に高くなっている。
ジェイはため息をついてエフの温もりから離れた。ぱっと立ち上がったエフはジェイの腕から逃れ、部屋の入り口まで退いてから振り向いた。
「……ごめん、ムリ……。そ、そういうのはやだ」
そう言って駆け出して行った。
分かっていた。
けれど、そばにいて欲しかった。
慰めではなく、ルーイの為でなく、自分のために。今エフに言ったことを後悔はしていないが、もう同じように接することはできなくなった。
孤独で狂いそうなほど寒い。ルーイからエフを奪うことはできなかった。
膝を立てて頭を抱え、ジェイはうつ向いた。
「ディ、ダメだった。おれ….」
涙は、何にも拭われることなくシーツへと落ちていった。
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