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エフはジェイの部屋から飛び出して外へ出、外の空気を胸一杯に吸い込んだ。
まだドキドキと心臓が波打つ。
確かに一番融通を利かせてくれるジェイに頼っていた。
ルーイに直接何か言ったりしたり出来なくて、いつもジェイの目につくように動いていた。
いつか言われた通りだ。
ルーイを前にすると漂ってしまう気まずい空気を、振り払ってくれたのはいつもジェイだった。
けれどまさか、求められるとは思わなかった。
欲のために体だけ求められた方がまだ良かった。
まだ楽だった。
ジェイの気持ちに、応えられない。
どうしても、できないと思った。
(やだって言っちゃった…)
自分の言った言葉が今になって胸にぐさりとささった。きしむ胸を押さえているところへ、背後から声をかけられた。
「エフ、ジェイの具合は?」
アイだった。
手桶を片手に、無表情に立っていた。彼もルーイの手当てを終えて出てきたところらしい。
「あ、ああ、傷はおちついてきてる。まだ気持ちの整理はつかないみたいだけど……無理もないよね……」
ちらりとアイが手桶と一緒に持っているタオルを見た。血に染まった布が入っていた。
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