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エフもそばにしゃがみ、できるだけ小さな声で話した。
「ジェイが、あたしのこと好きみたいで。あたし、ボスとジェイの中を悪くしちゃうじゃん、どうなっても」
アイはそれを聞いても表情を変えなかった。
「ジェイになんか言われたのか」
「おれじゃだめかって。あの人じゃないとだめなのかって」
流れ落ちる髪を耳にかけ、エフは続けた。
「ジェイはこんな状況だから誰かにいてほしいんだと思う。あたしじゃなくても……」
「くだらない」
短く言って捨て、アイは立ち上がった。
「ちょ、ちょっと待ってよ……」
表情の薄い顔でエフを見下ろすアイは、本当にくだらないと思っているらしかった。
「おまえはボスが好きなんじゃなくて、崇拝してるだけだ。
後ろめたさとボスのすごさにひれ伏してるだけだろ、おまえは。
ボスにやられたこと気にしてるのか?済んだことをとやかく言ってもしょうがないんだよ。おまえがズルズルひきずってるからボスも気にするんだ。ボスは謝ったんだぞ。だいたい無理矢理やられるなんてザラだったろ。ましてやおまえは女だ。前々からひどい生活だったはずだ。裏切りもしたんだろ?おれに言わせたらボスのことだけひきずってんのが気にくわない。
そもそもおまえがボスとジェイの仲をさけると思ってんのか?思い上がるのもたいがいに…」
「も、もういい…」
耳を塞ぐが、アイは止めない。
「ジェイの何が気に入らないんだよ。身売りしてたからか?おまえそんなこと言えた口かよ」
アイの遠慮のない意見が、耳から頭を直接かきまわすように痛い。
さらにアイは追い討ちをかけた。
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