~既望~

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あれから3日が経った。が彼は姿を一度も現さなかった。私の病室にはもちろんのこと、いつもの木の下にすらいない。やっぱり私のせいなのだろうか。そう思うと少し申し訳ない気持ちになった。いつもいつも行き合ったりばったりで、後先考えずに行動してきたから、今回もまた後悔してる。この窓から眺めてるだけでもよかったのにな。そう思いながらケヤキに目を向けると彼がいた。でもなんだか複雑な気分。ここでもう一度声をかけたら彼はきっともう現れなくなるだろう。「眺めてるだけでよかったのにな」ってさっき思ったばっかじゃん。よし、と決意したとき彼がぱっと顔を上げた。2人揃って口を丸く開け、数秒間。私がどうしようと思い終わる前に彼は駆け足でその場を去っていった。あー。後悔後悔。こんなことになるなら声を掛けるんだった。なんで毎回こんな終わり方なんだろう。私は枕に顔を埋め、足をバタバタさせた。あー。「なにやってんの」私は顔を上げられなかった。「なかなかおもしろい子だね」やばい顔真っ赤。「お取り込み中なら帰ろうか?」だめ。「大丈夫だからちょっと待って。」なにがなんだかよくわからず、私は彼を必死に呼び止めた。
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