ナチュラリズム

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ガラン。 「いらっしゃい佐久さん。今日は松茸が入ったんだよ。焼き松茸なんてどうだい?」 季節も山を赤く染め、次第に街の人も色とりどりに服を着始めてきた。山の恵みが我々の舌を心を楽しませてくれる。 「松茸の季節かぁ。今日の締めに最高だな。できたら今日は熱燗もいれてもらおうかな。」 「じゃあ私もあったまろうかな。大将熱燗お願いね。」 「姫様のご登場だね。わかりましたわかりました、何本でも入れますよ。」 いつのまにか、やってきていた。さりげなく、おれの上着まで掛けてくれていた。 「松茸なんて秋まっしぐら。」椅子に腰をかけながら楽しげに話しだす美保ちゃん。 この子とは、なにを話しても花を感じる。薔薇のような美しさ、向日葵のような元気、ラベンダーのような癒やし、いや彼女はタンポポみたいな優しさや強さ、健気な感情を見てしまう。 「きっと山奥なら、キレイな赤が見れるんだろうね。」
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