千里

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千里はいつも笑っていた。 笑顔よりも、微笑みの方がちかいと思う。 とにかく、暖かくて、何でも話せて、下らない話で笑ってくれて、優美と付き合いたいって言った時も応援してくれた。 正直な話、一緒にいるときは優美といるより楽しい…。 優美と一緒にいると自分のレベルがどんどん上がっていくのを感じる。 しかし、優美はオレの話ではめったに笑わない。 ただ単に、会話力が不足しているだけだ。 だから。 千里に甘えているんだと思う。 優美が笑ってくれない分、千里は笑ってくれる。 この気持ちは……。 わかっていた。 前からわかっていたのにわからないふりをしてきた。 しかし…。 大丈夫だ…。 まだ、 大丈夫。 明が深く考えごとしている間に、千里はもうシャワーから上がっていた。 ベッドで天井を向いたまま全く動かない明。 それを見た千里は不思議に思え、顔を覗きこむ。 濡れた髪が明の顔に優しく触れた。 「明くん…?大丈夫??」 意識が無い明を呼び戻すように。 「え?あぁ…、大丈夫です、けど……。」 明は千里をまともに見ることが出来ない。 それは千里の事を考えていたからではなかった。 「その格好はちょっと……さすがに、まずいですよ……。」 顔は真横を向いているが、横目でちらちら見てしまう。 千里はバスタオルで体をまいただけの姿だった。 「だって…………、」 「…着替えがないから……」 そう言いながら千里は下にうつむき、顔を真っ赤にした。 「き、着替えなら脱衣かごの近くにおいてあります!」 少し声がうわずった。 「あ、ありがと……」 そう言いながらシャワー室へ向かう千里は 「覗いても、いいよ…。」 顔を真っ赤にしたまま明をからかったみた。 「覗かないですよ!」 両手を横にふりながら否定した。 それを見ながらシャワー室へ逃げるように消えていった。 「さっきの可愛かったな…」 そう言いながらも明の胸を強く打ちつけるドキドキ感。 それは久しく忘れていた気持ちだった。
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