116人が本棚に入れています
本棚に追加
この女もそうだが、親父も親父だ。年単位で会わないような愛人を何故囲う必要があるのだろうか。
「‥‥とにかく‥‥
親父は死んだんだ。俺には沙織さんを養う経済力も無ければ義理もない。
早いうちに出て行って欲しい」
「‥‥‥‥分かりました‥‥」
沙織は意外とあっさり快諾してくれた。
俺は話す事柄もなく、目の前に並ぶクレープへと手を伸ばした。
すると
コンコン
分厚い居間の扉をノックする音が聞こえて、俺は思わず肩を震わせた。
この屋敷には沙織しか居ない‥‥そう勝手に思い込んでいたから。
俺は体を強張らせながら、扉の向こうに現れる人物を凝視していた。‥‥が。
「四宮さん!?」
開かれた扉の向こうには、顔馴染みの四宮さんが立っていた。
俺のすっとんきょうに上げた声に驚いたか、同じように目を丸くしている。
四宮さんは両親の共通の友人だ。
そして職業は、霊媒やスピリチュアル‥‥俺には良く分からないが【占い】が得意な太めのオジサンだ。
この人のお陰で取引が成功した!なんて話も聞いた事があるぐらい。
しかし‥‥まぁ両親の友達なだけに親父所有のこの家を知っていても不思議はないが、
このタイミングで、しかも玄関ではなくいきなり居間からの登場に少なからず俺は動揺した。
最初のコメントを投稿しよう!