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「沙織ちゃんの気の乱れが気になって見に来たんだけど‥‥寛貴君から貴司君達のことを聞いてしまったんだね‥‥?」
四宮さんの悲しげな問いかけに、沙織は黙って頷いた。
そんな沙織に四宮さんは近づき、肩に手を乗せた。
「ごめん‥‥隠すつもりはなかったんだけど、沙織ちゃんの気持ちを考えたら中々言い出せなくて‥‥」
「ちょ‥‥ちょっと待って!」
俺は思わず声を上げた。
「四宮さんがここを知ってるのは分かるんだけど‥‥なんで親父の愛人まで知ってるの‥‥?」
俺の問いかけに二人はこれ以上ない位に目を見開いている。
しまった。【愛人】とは流石にストレート過ぎたと思ったが、言ってしまった言葉は取り返せない。
俺は良心がチクリと痛みながらも、動揺を隠す為に表情を崩さないよう、黙って返事を待っていた。
そして気まずい沈黙を破ったのは四宮さんだった。
「‥‥いやいやいやいや!
違うよ!?寛貴君、凄い勘違いしてるよ!?」
「‥‥‥‥え?」
「沙織ちゃんと貴司君は不倫関係なんかじゃないよ!?
それは確かに、想い合っていた時期はあるけど‥‥」
「‥‥心の浮気だって充分家族を裏切ってると思いますけど?」
俺の言葉に、二人は悲しそうな顔をしながら言葉を失った。
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