116人が本棚に入れています
本棚に追加
その時、耳をつん裂く程の雨音が聞こえてきた。
「あ‥‥降ってきましたね‥‥。
四宮さん、今日は車?」
沙織が窓に目をやり、四宮さんの顔を覗き込む。
「いや‥‥今日は徒歩だよ」
「じゃあ、雨が止むまで家にいらして下さい。きっといつもの通り雨でしょうし」
お茶を持ってきますね、と沙織は居間から出ていった。
「‥‥て言うか、徒歩って?四宮さんちってこの辺なんですか?」
「あ‥‥ああ。
普段は仕事で東京にいるけどね。
元々僕も貴司君もこの辺に住んでいたんだよ。
今日はここから歩いて5分位ところにある実家に泊まるよ」
「へぇ‥‥」
俺は東京でしか四宮さんに会った事がなかった。
だからまさか四宮さんと父親が幼馴染みだったなんて知らなかった。
「お待たせしました」
そこに、トレイを手にした沙織が帰ってきた。
しかしトレイの上にはテーブルに並べられているティーセットではなく、日本古来の湯呑みにお茶が入っていた。
並べられたお茶を手に、お茶受けに出された金平糖を頬張る四宮さん。
そしてそんな四宮さんをニコニコと見つめる沙織‥‥
二人は趣向を把握する程深い間柄なんだな、と分かった。
最初のコメントを投稿しよう!