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食堂に移動した俺達の前には、懐石料理が並んでいた。
まだ食べてみてないが、美味しいのが分かる。
プロの料理人が作るように美しい出来映え。
今すぐ食い付きたくなる衝動を抑え、俺は席に着いた。
が‥‥
「あれ‥‥俺達の他にも誰かいるの?」
目の前に並ぶ3人前とは別に、2人分料理が並んでいる。
「あ、それは‥‥
それは‥‥貴司さんと、麗子さんの分です‥‥」
沙織はさっきまでの笑顔を引っ込め、寂しそうに呟いた。
「そ‥‥か。
‥‥‥‥ありがとう‥‥」
亡くなった人に料理を出すなんて感覚のなかった俺は、沙織の気遣いに涙汲みそうになったが
なんとかお礼を言うと、沙織は優しく微笑み返してくれた。
それからは3人で、何となく世間話をしながら食事をし、四宮さんは雨の上がった夜道を帰って行った。
「‥‥風が出てきましたね」
四宮さんを見送りながら、沙織が雲が流れる夜空を見上げる。
「そうだな‥‥まぁ、また雨が降り出す前に入ろう?」
何故だか不安な顔の沙織を見ているのが辛くて、俺は玄関へと促した。
それから俺は、沙織が用意してくれた部屋で寝る事にした。
俺が寝ている間も雲は流れては過ぎてゆき、雨を伴った台風へと変わっていった。
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