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俺は鞄から鍵を出した。
親父の部屋から見つけた鍵。
そのアンティークさから装飾品かとも思われたソレは、この建物を見れば思わず納得した。
そしてそれはピッタリと当てはまり…ガチャリと音を立てて開かれた。
扉は自身を軋ませながら、家の中を解放させた。
そこには。
予想道理、女が立ち尽くしていた。
やっぱり浮気かよ‥‥
半ば呆れ、しかし俺が口を開く前に彼女が声を上げた。
「たかちゃん‥‥」
「たかちゃん!?」
俺は親父のあだ名に思わず吹き出した。
「おい‥‥確かに親父は“貴司”だから“たかちゃん”なのかも知れないけど、50過ぎの親父に、たかちゃんは無いだろ‥‥」
「えっ!?えと‥‥」
「‥‥俺は寛貴。一ノ宮貴司の息子だ」
「ひ‥ひろき‥‥息子‥‥?」
彼女の顔がみるみる曇っていく。
そりゃそうだ。本妻の息子が出てきたんだからな。
「親父とアンタがどんな関係かは知らない。
だが親父…一ノ宮貴司は死んだんだ。だからこの家から出ていって欲しい」
「死んだっ!?いつ、どうして!?」
彼女は顔を上げると、俺に飛び掛かってきた。
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