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「あぁぁぁ…ちくしょう…ダメだぁぁぁ…もう歩き疲れた…今すぐ座り込みたい…眠りたい」
顔面の治療を終え約30分ほど歩き続けた所、街まであと半分の距離にきたあたりでレンは愚痴をこぼした
「もう…レンくんたら運動不足すぎるよ」
「ぷぷぷ…情けないのぅ…ワシらは昨日の夜から村の皆を避難させておって寝てないと言うのに」
ユキとじじぃは歩を止め、少し遅れて歩くレンの方を見ながら苦笑する
「なにおぅ!」
(ほとんど寝たきりに近い生活してたからなぁ…体力がなくなっているとはいえ…ユキはまだしもじじぃに劣るのはしゃくだ!!)
肩を上下に揺らしながら呼吸を荒げつつもレンは歩みを止めようとしなかった
そんなレンの姿にじじぃは小さい頃のレンを重ねていた
――――
―――
――
―
10年前の山道
呼吸をするのに激しく肩を上下させ山道を下ってきたレンはワシに向かって必死に言葉を吐き出した
『村長のじぃちゃんっ…』
あの時も、今回のように魔人の襲撃によって老人や子供はいち早く避難していた
しかし、レンが村から逃げ遅れたのを知ったワシは街から山道を登っていた…その途中に無事な姿を確認したのは幸いだった
だが…
『…父ちゃんが…母ちゃんが…うぁぁぁぁ』
今回のように予期した襲撃ではなかった為に実力ある者で魔人を食い止めようとした
『…レン……』
レンの両親は…その中でも選りすぐりであった…並の魔人なら打ち倒せるほどの…
『ん…なんじゃその頬の腫れはっ!』
ワシにあった瞬間ボロボロと泣き出したレンの顔はよく見ると右頬が赤く腫れ上がっていた
『父ちゃんに殴られた…泣くな…今は我慢して街まで走れって…』
『…』
『それと…』
『!?…それと…なんじゃ…?』
嫌な予感がした
『この言葉を村長に伝えてくれ…って…』
ワシの娘も…その他何人もの若い者達が…村に残り戦っていたのだ…
『ガキ共を頼む…ジジィにババァども…長生きしろよ…って…ぅぅぅあぁぁぁ』
村がどうなったのか察するには充分な言葉だった
『ぅぅぅ…レン…よく頑張って走ってきたのぅ…よく頑張った…言伝は確かに受け取ったぞ…』
後に四天王が一人と呼ばれる魔人だと聞いた
10年前…
村に残り戦った全ての者が…たった一人の魔人に全滅させられたのだ…
―
――
―――
「おいっじじぃ」
(これで二度目じゃな…魔人のせいで村から追われるのは…)
「クソじじぃ!」
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