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2010年。
日本政府は平和を捨てた。
世界の競争社会に負けぬよう、国家総動員法を再び採択し、帝国主義を再興させたのだ。
魔法を科学として成立させ、それを基盤にした戦力を保有し、核をも凌ぐ力を手に入れた日本が、世界的な軍事国家となるのは一瞬だった。
やがて政府は、日本中にある大学の中から8つを選び出し、その大学のある地域を支配させる。
それら8つの大学は日本戦力の要となり、『八大竜王』と呼ばれるようになった。
8つの要塞を要とした、世界最強の軍事国家、日本。
それを揺るがす事態は、突如としてやって来た。
『あら、これテレビ中継? ちょっと良いかしら』
ある日、とある娯楽番組の取材班は、原宿で1人の少女に街頭質問を行っていた。
美しい金髪を双の束に結い上げた彼女は、しなやかな身体に長い手足を持ち、赤い吊り目が特徴な美少女だった。
彼女は自分の胸に手を当てると、前屈みになって撮影機を覗き込んだ。
『良いこと、日本政府。八大竜王だか何だか知らないけれど、下らないわ。私に言わせれば、脆弱としか言えないわ。ほら、反政府発言よ?さっさと私を殺しに来ると良いわ』
その瞬間、取材班は戦慄した。
反政府思想者は、警察の手によりすべからく極刑に処される。
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