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○●○
「なぁ」
翌日、朝8時50分。
2人は、堅く閉ざされた赤門の前にいた。
機械装甲を纏った特殊警察や日本軍が堅牢な防備を見せる前で、2人は堂々と会話を重ねていた。
「何かしら」
「君はまだ高校生だろう?」
「年齢的には、ね」
「あんな力を持っているなら、もっと別なことに使うべきじゃないのか? 国家転覆なんて狙わずに」
「ま、普通そうよね」
やけにあっさりと、紗音は礼太の言葉を認めた。
彼女は結った髪をいじりながら、酷くつまらなそうに口を開く。
「私、俗にいう天才なのよ。年齢は高校生だけれど、博士過程を修了してるし、運動だってインカレに出場した8つの競技全てで優勝したわ」
何の自慢にもならないけれどね。
そう続ける彼女の言葉に、偽りはなかった。ましてや、そこに驕りや自慢は全く感じられなかった。
ただ素直な感想として、紗音は言葉を連ねる。
「つまらないのよ、人生が。このまま生きていたってお金は捨てるほど稼げるし、男も権力も思うがままだわ。
全てが見え透いているの。
生まれた瞬間から、自分で自分のレールを敷ききってしまったのよ。
それはありとあらゆる方向に向いていて、ありとあらゆる時間、ありとあらゆるタイミングで方向転換可能な、まさに万能のレール」
「それは幸せなんじゃないのか?」
礼太は素直に口にした。
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