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飽くなき欲求。進化への本能。
彼女はそれを抑止することをしない。むしろ、自らによる抑止を最も恐れていた。
溢れる才能を、余りある才覚を、使い切る。
それを紗音は、自分にとっての進化と呼んだ。
「進化の果てに、お前はどんな未来を望むんだ?」
いずれにせよ、彼女がその身に宿す才能を使い切るのは、人のままでは難しい。或いはこの世界が狭すぎる。
文字通り、生まれた世界を間違っている。
生れつきその才能を活かしきれない彼女は果して、その行く末に何を見る?
しかし紗音は、苦笑しながら首を振った。
「それが解っているなら、進化なんてものは求めないわ。停滞は退化を呼ぶ。けれど代わりに、安定を得られるわ。
それは今の私の生活よりも遥かに楽だし、本来ならそれを求めるべきだと、解ってもいる。
だけど、私はそれを望まない。
才能を使い続けること。
それが、私の望む進化への手段よ」
そして彼女は、赤門に向かって身構える。
それに応じるようにして、特殊警察たちも武器を構えた。
「死ぬぞ」
「どうして?」
「日本は世界最強の軍事国家だ。特に東京大学は、首都圏防衛を司る日本の要なんだぞ」
「だから?」
彼女は何でもないように、さらりと言ってのけた。
退く理由には、ならないのだ。
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