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「どんなになっても………………そばにいるって…………約束したのに……………」
徐々に黒く染まりゆく手で顔を覆い、ノゾミは溢れ出す涙を拭った。
目の前には、すでに事切れた男が1人倒れている。
仰向けに横たわる男。
その顔は、この上ないほどの恐怖におののいていた。
まるで、この世のものとは思えないものでも見たかのような………
例えようもない恐怖に襲われたということを、その死相から伺い知ることができる。
「タケル…………。あなたが悪いのよ…………。あなたが…………」
膝をつき、おえつまじりに泣き崩れるノゾミ。
そのノゾミの姿は時間と共に少しずつ、ゆっくりと変貌していく。
白くきれいだった肌は徐々に黒みを帯び、今では薄い灰色にまでなっている。
艶やかな黒髪は光を無くし、肌とは対照的に白く染まっていく。
何よりも異様なのは顔だった。
かわいらしい顔をしていたノゾミの顔。
その面影はもはや無く、灰色に染まった肌同様、顔の皮膚も灰色に染まっていた。
そして、人間とは思えないキバが生え、表情は獣のようになっていく。
極めつけは、頭に生えた小さなツノ。
そう。
ノゾミの容姿は、『鬼』と呼ばれた架空の魔物のようになりつつあった。
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