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最初の死者が発見されて3ヶ月あまり過ぎた頃。
原因不明だった死因の全容が少しずつ明らかになってきた。
まず、この変死を遂げた被害者は全員、あるウィルスに感染していたことが判明した。
そのウィルスは、今まで発見されたことのないウィルス。
つまり、新種の悪性ウィルスだったのだ。
このウィルスが被害者の体内に侵入し、何らかの突然変異が起こった。
その原因は定かではないが、突然変異を起こして発症してしまうと、体内のあらゆる臓器が停止して死に至るのだという。
潜伏期間は不明。
発症から死に至るまでが早く、早くて2日、遅くとも5日で死に至る。
抗生物質なども全く効果が無く、発症してしまうと100%の確率で死亡する。
また、感染経路も不明。
被害者の死亡までの経緯を後追いしたが、空気感染、接触感染、体液感染など、ありとあらゆる感染経路が可能性として残されている。
現時点では、感染経路を確定するまでには至っていない。
さらには、その死に際に特徴がある。
感染し、発症した人間は、激しい頭痛や動悸などの症状が現れる。
その後症状は悪化し、次段階に入ると自暴状態に陥る。
そして最終段階に入ると、このウィルスの最大の特徴が現れてくる。
肌が黒色を帯び、髪の毛は白髪化。
形相は獣のようになる。
さらには、頭頂部に2本のツノが生え、歯と指先が鋭く尖るのだ。
このように、史上類を見ない特殊な悪性ウィルスだが、感染力はさほど高くない。
3ヶ月経過した現在の被害者数は9人。
その全てが、20歳前後の女性に限られているのだ。
症例が少なく断言はできないものの、このウィルスは若い女性にのみ感染するのではないかとの見方も出ている。
人々はこの新型悪性ウィルスを『F1-TSウィルス』、通称『鬼化(きか)ウィルス』と名付け、特効薬の開発へと着手した。
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