本当の鬼

7/11
前へ
/75ページ
次へ
ノゾミの誕生日から3ヶ月後。 ノゾミは珍しく風邪をひいてしまった。 微熱が続き、体のだるさはあったものの、症状は比較的軽い。 お見舞いに駆けつけたタケルの看病もあってか、ノゾミの風邪は快方へと向かっていた。 「鬼のかくらんってやつかな?」 「それ、ひどくない?」 タケルの冗談に笑いをこぼすノゾミ。 明日になれば、もうすっかり元気になりそうなくらいに回復していた。 「ま、元気になってきたみたいだし、俺そろそろバイト行ってくるわ」 「うん、ありがとう」 「へーきへーき。ちゃんとあったかくして寝てろよ?」 そう言いながら上着を羽織るタケル。 外を見ると、ちらほらと雪が降り始めていた。 「おー。外は寒そうだなぁ。雪降ってきたぞ」 目をしかめて外の景色を見るタケル。 降り出した雪は積もるようなものではなく、地面に落ちてすぐ消える粉雪のようだ。 「くっそー、マフラー持ってきておけばよかったなぁ。ノゾミ、悪いけどマフラー貸してくんね?」 「…………」 タケルの問いかけに、ノゾミは答えない。 「ノゾミ?悪いけどマフラー………」 そう言いながら振り返ったタケルは、一緒自分の目を疑った。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加