21人が本棚に入れています
本棚に追加
その昔、人間は自らの統率を取るために『悪』の存在を作り上げた。
日本でのそれは『鬼』と呼ばれ、老若男女問わず忌み嫌われてきた。
『悪さをすれば鬼が来るぞ』
『鬼が来て食ってしまうぞ』
言うことを聞かない子供に、『鬼』という恐怖を植え付ける。
そして、不従順な子供をに『鬼』という存在を振りかざし、手っ取り早く従わせる。
子供にとって『鬼』は『恐怖』であり、大人にとっては『道具』であった。
存在しない『架空の悪』をでっち上げ、それを利用して思い通りに支配する。
その風潮は、今もなお根強く残っている。
1人の弱者をターゲットにしたいじめ。
見せしめのように叩きのめすマスメディア。
トカゲの尻尾切りのように用済みな人間を切る政治家。
『鬼』は姿を変え、今もなお忌み嫌われている。
一番の被害者は、むしろ『鬼』ではないだろうか。
人間の都合で『悪』に仕立て上げられ、言われもない罪を着せられる。
今日もこの世界のどこかで、『鬼』は届くはずもない泣き声を上げているのかも知れない。
そして、その姿を見て人間はこう叫ぶ。
「あなたが………悪いのよ……」
本当の『鬼』とは………………
最初のコメントを投稿しよう!