本当の鬼

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その昔、人間は自らの統率を取るために『悪』の存在を作り上げた。 日本でのそれは『鬼』と呼ばれ、老若男女問わず忌み嫌われてきた。 『悪さをすれば鬼が来るぞ』 『鬼が来て食ってしまうぞ』 言うことを聞かない子供に、『鬼』という恐怖を植え付ける。 そして、不従順な子供をに『鬼』という存在を振りかざし、手っ取り早く従わせる。 子供にとって『鬼』は『恐怖』であり、大人にとっては『道具』であった。 存在しない『架空の悪』をでっち上げ、それを利用して思い通りに支配する。 その風潮は、今もなお根強く残っている。 1人の弱者をターゲットにしたいじめ。 見せしめのように叩きのめすマスメディア。 トカゲの尻尾切りのように用済みな人間を切る政治家。 『鬼』は姿を変え、今もなお忌み嫌われている。 一番の被害者は、むしろ『鬼』ではないだろうか。 人間の都合で『悪』に仕立て上げられ、言われもない罪を着せられる。 今日もこの世界のどこかで、『鬼』は届くはずもない泣き声を上げているのかも知れない。 そして、その姿を見て人間はこう叫ぶ。 「あなたが………悪いのよ……」 本当の『鬼』とは………………
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