鬼哭く夜に降り立ちぬ

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  「どう……でしょうか?」 喫茶ニュー銀座の店内は、三角帽の電球が灯っているだけで昼間なのに薄暗く、更に窓のステンドグラスが表の陽光を遮断している為に、鬱蒼とした雰囲気をより際立てるのに役立っていた。 「恵さん……でしたか。この写真はあなた御本人が撮られた物に間違いないんですか?」 香取はテーブルの上に置かれた写真を眺めながら、対面に座っているセーラー服の少女に問う。 「はい……先日、夜中に裏の納屋で物音がしたので不思議に思って窓越しに覗いて見たんです。そしたら『ソレ』が立っていたので、慌ててデジカメを……すぐに消えてしまったのですが」 「あの、その時怖くはなかったんですか?」 真崎は穏やかな口調で恵という少女に聞いてみた。 「突然の出来事だったので怖いと思うより先にシャッターを押していたんです。でも、後になって冷静に考えたら怖くなってしまって……他に相談出来る人もいないので。まともな人じゃ聞いて貰えそうもなかったですし」 香取は珈琲を一口啜ると少し自嘲気味に笑う。 「それで、私らみたいに胡散臭い人間に相談しようと思った訳だ」 「先輩!」 隣に座る真崎が香取をキッと睨み付ける。 「あ! ごめんなさい! 決してそんなつもりじゃないんです……私、こんな経験初めてで。専門家に相談したほうがいいかと……あの、気を悪くしたんなら本当にごめんなさい」 恵は頭を下げながら弁明する。 「いえ、大丈夫ですよ。かえってすみませんね……ウチの香取が無神経な事言っちゃって。それに私達、世間一般での自分の雑誌の評価がどういうものなのか心得ているつもりですから……恵さん。私の見解から言わせて頂きますと、この写真はおそらく憑鬼。いわゆる鬼だと思います」 一瞬、恵の顔が強ばった。 「鬼……ですか……」 「えぇ……実際、見てみないと何とも言えませんが。もし、良かったらお宅にお邪魔させて貰えませんか?」 真崎の言葉に恵は身を乗り出した。 「是非、お願いします。幸い暫く両親が家にいないので私ひとりなんです」 香取の眉がピクリと上がる。 「ちょうどいい。それだったら……泊まり込みで見張らせて貰ってもいいですかね?」 「ちょっと! 図々しいですよ! 先輩。あ、私達どこかで宿とりますから……」 「いえ。私は構いませんから、是非そうして下さい。それに一人じゃ心細くて」
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