鬼哭く夜に降り立ちぬ

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  憑鬼の首筋を掴んで投げ飛ばし、香取の目の前に現れたのは。 別の異形……。 その容姿たるは、深紅に染まった天を突く程に逆立った毛髪、衣服から覗く肌の色は鉱物のような赤褐色。 更に下顎から伸びる犬歯は五センチ程の牙となり、恵を掴んで投げ飛ばした鋭い鍵爪が、だらりと下げた両腕から顔を覗かせていた。 首筋を抉られ、唖然とする憑鬼は苦悶の表情を見せる。 「ぐっ……その服、貴様……小娘か? この力……その姿。貴様、陰陽師などではないな……まさか、貴様」 そう、身に纏う衣服は紛れもなく真崎の物である。 真崎の圧倒的な覇気に気圧され、じりじりと後退りをする憑鬼。 「我が名は真鬼(まさき)。お前のように人の世にさ迷い出た輩を滅する宿命を持つ真の鬼……私はその末裔、真鬼麗奈。 醜く浅ましき嫉妬より生まれ出でし憑鬼よ。案ずるな、お前はすぐ無に還る」 ゆるりと持ち上げた真崎の右手が、ほのかに紅く光り出す。 「聞いた事があるぞ……圧倒的な強さで鬼を狩る鬼……まさか貴様がそうだとは……お、おのれぇ……滅ぼされてたまるか……滅ぼされて……たまるかぁ!!」 強く噛み締めた口元から、どす黒い血を垂れ流した憑鬼は、眼を閉じた真崎の一瞬の隙をついて猛然と襲いかかる。 だが。 両者がぶつかり合う瞬間、真崎はカッと両眼を見開いた。 「滅!」 「ぐぎゃぁぁぁ!!……」 紅光を放ち、一直線に突き出した真崎の右手が憑鬼の身体を貫くと、獣の雄叫びのような断末魔が響き渡る。 勝負は一瞬にしてカタがついた。
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