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始まるよ
そんなことを思いながら、
「じゃあ、おばさん。他に届けものがあるから」
「ああ、がんばって頂戴ね」
挨拶をかわしてその場を去った。
こうして届けものに走っていると、前をリンとおんなじ位な十六歳くらいの少年が本を読みながら歩いている。
リンは立ち止まり、手でパタパタとコートや服をはたく。
おかしなところや汚れのないことを確認すると今度はゆっくりとあるいてそっと彼の隣に近づく。
「お、おはようございます。ウールくん」
ウールと呼ばれた青年な本から顔をあげてリンを見た。
「ああ、リンさん。おはようございます」
ウール・エディ。ダボダボの服を着て眼鏡をかけた茶髪の青年だ。
優しそうな笑顔で彼はリンにあいさつする。
「ウールさん、朝早いですね」
「いやいや。実は本を読んでいる間にいつの間にか朝になっていたんですよ。それで気分転換に出てきたんですが本のつづきがきになってついつい夢中になっていたようです」
はははっと少し恥ずかしそうに笑うウール。
そんな彼の様子に頬笑み
「いえ、勉強熱心なことはいいことだとおもいまよ。私なんて学校には幼校までしか行ったことがないのでせいぜい文字が読める程度ですから、尊敬します」
「僕なんかまだまだ。世の中には見たこともないようなことがたくさんで追い付けないくらいです。いつか」
「『世界中の知識を得て立派な学者になることが僕の夢なんです』ですよね。毎日のように効いているからもう覚えちゃいました」
「はははっまいったな」
「でも、そうなれたら素敵ですよね」
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