0人が本棚に入れています
本棚に追加
***
静寂を切るようにカツカツと靴音がした。
昼間はうるさくて耳を塞ぎたくなる位の中庭とは大違い…
今や、大学にいるは彼だけで、まるで彼の庭であるかのように悠々と歩く男がいた。
右を曲がれば、赤門がある。
ーそんなに通りたいなら、どこの大学でも作れば良いのにー
そう思い、立ち止まって紅い門を見上げる…
「あ、終電。」
感情もなく放つ言葉にふと自ら気付き、足を急がせた
駅に行くには裏路地が手っ取り早い近道。
しかし彼は急がば回れだったのだ。
ーあぁー
絡まれた。ヤバイ……
絡まれた。
髪色が何とも奇抜な方々に囲まれてしまった。
「おい、あんちゃんよぉー。話聞こえてんのかぁあぁ?」
と、脇腹を小突く金髪のデブ。
…デブのくせにカッコつけて見苦し…
彼はそう思ったが、すぐにその考えを掻き消した。
今はここから抜ける術を考えなければいけないのだ…
奴らは金目当てで狙っているのだから、さっさと降参し、走って帰るしかない。むやみやたらに突っ掛かれば、痛い目に合うのは容易に想像できた。
「いくら欲しいんですか?金ならありますから。」
彼は棒読みで発言した。
一瞬、男共はびっくりしたのか目を丸くしていたが、条件に満足したのか、解るやつじゃないか。と、両手を広げ、彼の財布を奪い取った。
最初のコメントを投稿しよう!