君の、笑顔。

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 僕の大切なセイを。セイはどれほど悲しんだだろう。きっと、花束を買うことは初めてだったから、勇気がいっただろう。それなのに買ったばかりの花をめちゃくちゃにされて、泣きたかったに違いない。花を買い直そうと思っても、それだけのお金は持ってないはず。仕方なくそのまま帰ってくるしかなかったのだろう。それを思うと胸が痛んだ。セイは絶対にいいものを渡そうと意気込んでいたのだから、そんな風にされた花束は僕には渡せない。それを告げるのも嫌だったのだろう。お互いにプレゼントしようと言い出したのはセイ自身なのだから、そんな情けない言葉は言いたくなかったに違いない。だから、用意できなかったと言うしかなかった。その上僕に酷いことを言われて、どれだけ心に傷をつけられたのか……。  あんなことを言ってしまった僕も悪い。だけれど、セイが事情を話してくれたらそんなことを言うこともなかった。今回は、お互い様だ。だけれど、花とセイの心を大いに傷つけた悪がきは許せない。絶対、後で懲らしめてやる。
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