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「セイ、今日の夜は起きてなくちゃダメだよ」
双子なのに弟よりずいぶん大人びている兄の耀は、新聞を開いて言った。
「何で?」
まだまだ幼い弟の聖は兄に近づき、後ろから新聞を覗き込む。
「ほら、ここ」
耀は下の方の記事を指差す。
「……ししざ……りゅう…?」
「獅子座流星群。今日の夜中がいちばんすごいんだって。絶対見ようよ」
「うん!! 流れ星見てみたい!! どんな感じなのかなあっ……」
「それは見てのお楽しみだよ。そうだ、セイ、流れ星が流れている間に願い事を心の中で3回となえると叶うらしいよ」
「ねがいごと?」
「うん。ちゃんと3回となえるんだよ」
「わかった!! 楽しみだね!」
聖は満面の笑みで兄の背中に抱きついた。聖はどんな時でも兄と一緒にいられればいいのだ。生まれた時から傍らにいた、頼もしい兄と。
耀の首が締まらない程度にぎゅっと力を入れて腕を絡ませ、頬をすり寄せていた聖は、兄から送られてくる体温に瞼が重くなっていた。
「…セイ、眠いの…?」
耀の声さえもどこか遠くに聞こえる。聖は条件反射で首を縦に振った。
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