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日本のバレンタインデーは、主に女の子が好きな異性にチョコレートをプレゼントすることになっている。それにあやかって、僕もセイへのプレゼントは、最初から手作りのチョコにしようと考えていた。セイは僕と違って甘いものが大好きだし、僕の手作りと聞いたら喜ぶだろう。でも、そのチョコレートをいつ作るかが問題だった。僕は料理は得意だし、そういう面では心配ないが、作っているところをセイに見られては内緒で用意することはできない。よく考えた結果、セイが眠りについた後に作ることに決めた。
「おやすみ、セイ」
バレンタイン前々日の夜、セイを寝かせて僕はキッチンに立った。おつかいのついでに買ったチョコレートや生クリーム。それらを駆使して、眠いのを必死で堪えながらセイが好きな生チョコレートを作った。ただ、セイが喜んだ顔を見たいだけに。
ぼくはまだできかけのチョコレートをタッパーに注ぎ込んで、一晩冷蔵庫にねかせた。次の日の夜も、セイが眠った後にベッドから抜け出して、チョコレート作りの続きをした。さすがに2日も続けて夜更かしすると、眠くて眠くてしょうがない。頑張って起きているつもりでも、ふとした瞬間に立ったまま寝てしまっていて、僕は睡魔と激しく闘うはめになっていた。
セイは、呑気に寝ている。ちょっと恨めしかったけれど、何をプレゼントされるのかなと思いをめぐらせたら、許せた。
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