1人が本棚に入れています
本棚に追加
――Ⅲ
―後日。
教室ではまだ授業といった授業はなく、今日はただの自己紹介をするだけ。
その後、先生と共に各施設の見学を行い、一日を過ごす事になるらしい。
もちろん、今日は昼までで、とくにめぼしいものはない。
そんな退屈な中、翔は頬杖をしながら自己紹介用のメモにどうやって軽音楽の勧誘のため事を書くか悩む。
正直、俺はこういう事が苦手だ。というよりは馴れ合いということに好意を持っていないと言うのか、コミュニケーションということに全く関心がない。
だけど仕方がないのだ、昔からそうだったから。
自分の席は先頭に近いからか、自分の番になるのは異常に早い。
軽く席から立つと何時も眠そうな表情で自己紹介をする。
「……僕の名前は磯部翔です、得意なこと、というか好きな事は服を作ることと『本気でバンドをすることです』」
と、ここで少し辺りがざわめく。
珍しげに見ているのか、それともただ馬鹿にしているのか。俺にはわからなかった。
ただ、その中で一人だけ、俺の顔を真剣になぜか見ている一人の少女。
佳に近い茶色の髪をサイドにまとめ上げているふわふわの髪。多分天然だろう、少しちんまりしており、身長は低め、つりめでもない普通のパッチリとした目。
関係ないと、思ったがここで、典型的に関係をもった方がいいと翔は直感で気づく。
彼女の机の横にはスネアケースがおいてある事に今更気づいたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!